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学生時代のクリスマス
2008年12月18日 木曜日
佐々木は四年制の大学を5年がかりで卒業した。だから大学生として、5回のクリスマスイブを過ごしたことになる。
そのうち、彼女や友人と過ごしたクリスマスイブは、ただの一度もなかった。学生時代のクリスマスイブはすべて、重度の身体障碍を持つ人の自宅で、介護ボランティアとして過ごした。
佐々木が学生時代を過ごした京都は、学生の街でもあったから、ボランティア活動が比較的盛んだった。重度の身体障碍を持ちながら、施設には入らず、ボランティアの支援を組織して自宅で生活している人が多かったのだ。
「ボランティア活動が比較的盛ん」とはいっても、あくまで「比較的」であって、毎日の介護者を確保するのは、それはそれは難しいことだった。
当時はいわゆるバブルがまだ崩壊し切ってないころだったから、「若者はクリスマスイブの夜を恋人と楽しく過ごすもの」というキャンペーンは、マスコミを通じて今以上に盛んに行われていた。それだけに、普段でさえ困難な介護ボランティアの確保が、クリスマスイブの夜ともなると、ほとんど不可能といってよいほど難しいものになった。
そんなわけで、佐々木のように「誰もやる人がいないことに限ってやる気になる」ヒネクレ者が、毎年介護に入ることになる。
六畳一間の公団アパートで、通所サービスから帰ってきた彼の体を抱え上げて車椅子から下ろし、聞き取りにくい不自由な発話からなんとか意図を推測しながらコミュニケーションし、スーパーに行って買い物をし、溲瓶で小便の世話をし、食事を作り、食べ物飲み物を口に運び、銭湯に連れて行って体を洗い、帰ってきてポータブル便器を用意して大便の世話をし、便器を洗い、介護者を探す電話を掛け、多くの介護者の体臭が染み込んだ布団にくるまって眠り、夜中でも喉が渇いたといっては起こされ、翌朝も食事や排泄の世話をし、体を抱え上げて車椅子に乗せ、通所サービスからの送迎バスを待つ。
佐々木はクリスチャンではないが、「聖夜」という言葉はこういう夜にこそふさわしいのではないか、などとぼんやり思いながら、そんないつも通りのクリスマスイブの夜を過ごしたものだった。
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