ビー・ドキュメント代表 佐々木 一郎の公開日記

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今年最も感銘を受けた本

2008年12月31日 水曜日

佐々木が今年読んで最も感銘を受けた本は、アレクシス・ド・トクヴィル(1805年~1859年)の『アメリカのデモクラシー』(松本礼二訳、岩波文庫、第1巻(上)第1巻(下)第2巻(上)第2巻(下))だった。

傍線というのはあまりたくさん引くと傍線の意味がなくなるのだが、それでもこの本には、興奮して傍線を引きまくらずにはいられなかった。

フランスの古い貴族の家系に生まれ、貴族制の崩壊と民主制への移行を目の当たりにしたトクヴィルは、民主制が世界に何をもたらすのかを考究するべく、民主制が当時最も典型的に発展していた、建国後半世紀に満たないアメリカに渡った。

『アメリカのデモクラシー』は、その約9か月のアメリカ滞在で得た、見聞と資料に基づいて書かれた本だ。

170年以上も前のアメリカについて書かれた本ではあるが、現代社会を正しく理解するための貴重な手掛かりを、豊富に提供してくれる。

民主制が定着した状態を驚きの目で見ることは、現代社会に生きる我々にとって、ほとんど不可能に近い。

トクヴィルが提供してくれるのは、この「民主制が定着した状態を驚きの目で見る」視点。

地上での移動に地図が役立つのは、「地上から離れた位置から見た地上」が描かれているからだ。

同じように、「民主制社会ではない社会から見た民主制社会」を描いたこの本は、民主制社会に生きる指針として、驚くほど役立つ。

地理、人種、先住民、統治、行政、選挙、法律、司法、陪審、経済、労働、奴隷制、地域共同体、家族関係、教育、人生観、宗教、学問、文化、芸術、戦争、革命と、取り上げられていない問題はないのではないかと思われるくらい、あらゆる問題が取り上げられている。

しかも、単にバラバラの事実をバラバラのまま並べ立てるのではなく、事実の背後にある構造や法則性に踏み込んで叙述しているので、全体像から具体例に至るまで、物事がスッキリと頭に入る。

それだけではない。

トクヴィルは、民主制社会と貴族制社会のそれぞれについて、その内部の個人や集団の典型的な性格や行動を、社会構造の特質から説明して見せている。

人はつい、自分の欲望や意思や思想を、自分で自由に持ったものであるかのように思いがちだ。

トクヴィルによる民主制社会の分析を読むと、現代の我々自身の欲望や意思や思想が、実は民主制社会に生きるがゆえに持たされてしまったものであることに、嫌でも気づかされる。

 

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