一人称
2009年07月25日 土曜日
英語の“I”に相当する言葉がないというのは、日本語の豊かさであると同時に、不便さでもある。
子供の頃は、公的な場での男の子の一人称は「ぼく」、女の子の一人称は「わたし」、と刷り込まれる。
これが大人になると、公的な場での標準一人称は、男女を問わず「わたし」に統一されてしまう。
男は、子供の頃はさんざん「使ったらヘン」と刷り込まれた一人称を、大人になると、自分を指す表現として使わなければならなくなる。
この気持ちの悪さ。
しかも男にとって「わたし」というのは、公的な場限定で使う一人称だけに、どうも自分の中の私的な部分を抑圧する感じがつきまとう。
かといって「ぼく」では幼稚、「オレ」では無骨、「わし」では驕慢、「小生」では大仰、「拙者」ではアナクロ 、「ミー」では軽薄。
文書を書くとき、特に男性で、自分の苗字を一人称にする人が増えている気がする。
こうした人たちは、どの一人称を使っても収まりがつかないこの状況に苦吟した挙げ句、とりあえず現時点で最も英語の“I”に近い中立的な一人称として、自分の苗字を使っているのではないだろうか。
少なくとも佐々木はそうである。
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