ビー・ドキュメント代表 佐々木 一郎の公開日記

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もの

2009年08月02日 日曜日

数日前、テレビをつけたら、「クラシックジャンボ(ボーイング747-300型機)引退」のニュースが流れていた。

最後のフライトに向かうジャンボジェットに、日航の職員らしい100人近くの人々が一列に整列し、手を振っている映像だった。

言ってしまえば「大のおとな」たちが、飛行機に向かって真面目に手を振っている光景を、一瞬、滑稽と感じかけた。

いやいや、あれは別に飛行機に手を振っているんじゃなくて、飛行機に乗っているお客さんに向けて、あくまでひとつのセレモニーとして、手を振ってるんだな。

と思いなおし、納得しかけたところで、また考えが変わった。

やはりあの職員たちは、引退していく飛行機そのものにも、心からの惜別と感謝と慰労を込めて、手を振っていたのだ。

ちょっと前にテレビで、新人の航空整備士が、先輩整備士の指導を受けている場面を見たことがあった。

飛行機の翼のフラップ部分のネジを締めたあと、万が一ネジがゆるんでも落下しないように、針金できつく固定する作業の指導だった。

数本のネジに太い針金を巻き、大きなペンチできつくねじり、ニッパーで端を整えていく。

針金を締め上げる作業の繰り返しで、新人整備士の手は、大きなマメだらけになっていた。

新人が作業を終えると、先輩整備士のチェック。

先輩整備士は、針金の巻き方が基準を満たしていないことを指摘すると、すべての針金をニッパーで切断し、一からのやり直しを命じていた。

あの大きな飛行機のネジ一本にさえ、心血を込めた整備が日々繰り返されている。

飛行機一機に対して、就航から引退までの間に、整備に関わるスタッフの人数、整備に注がれる努力の量の膨大さは、想像を絶する。

整備だけではない。

設計、製造から運行、操縦、機内サービス、清掃に関わった人々。

備品や消耗品の製造や供給に関わった人々。

こうした人々まで含めると、おそらく億人単位の人々が、一機の飛行機を存在させるために関わっているのではないか。

そう考えると、飛行機は単なる「物」ではない。

「物」として現れた、億人単位の人々の、組織化され実体化された「魂」なのだ。

引退にあたり、一機の飛行機が人々の心からの惜別と感謝と慰労の対象になることは、なんら不自然なことではない。

 

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